調査報告について / REPORT
平成30年11月実施「タオル流通動向調査」の結果に関するリリース
アンケート対象のタオル流通会員企業の今調査での景気動向への見方を示す「業況判断DI」は -0.54と、5月調査(-0.78)、8月調査(-0.60)に比べて改善傾向が見られるものの、依然として非常に厳しい水準の判断が持続。
一方で、先行きに関しても、足許の厳しい判断状況に鑑み、「不要不急のタオル製品に対する財布のひもは固いまま」などの声を反映する形で「業況判断DI」は -0.54 と、前回8月調査(-0.60)と比較して少し改善されたとはいえ、引き続き厳しい状態が持続すると考えている先が大勢となっている。
販売動向に関しては、「やや悪い」「悪い」と答える先が全体の46%にのぼるなど、厳しい販売地合いが続いているとの判断が多数を占めているが、23%の先で「良い」「やや良い」と判断するなど、一部には改善傾向が窺われるところ。
この間、前月に比べて仕入価格の上下を問う質問では、全体の69%の先が「上昇した」と判断しており、全体としては上昇基調が続いている。大きな要因としては、人手不足に因る運賃や加工賃等の上昇や、原油、原料綿花相場の高止まり、日米金利差拡大による円安傾向などが指摘されるところである。
一方で、販売価格に関しては、一部先では強弱入り乱れているが、4割弱の先で「上昇した」と判断するなど、仕入価格を販売価格に転嫁する動きも顕在化してきている。
この間、在庫水準に関しては、「過剰」と答えた先が半数以上にのぼるなど、全体としては、流通段階のだぶつき感は、依然として高水準にあると考えられる。
Q. 業況判断に関する質問
業況判断DIの最近の推移をみると、本年2月調査で記録した-0.85をボトムに徐々に判断は改善してきている傾向が続いている。しかし、水準については今回調査でも、大幅なマイナス圏での動きとなっており、各社の判断は引き続き大変厳しい状況が持続している。
*業況判断DIは、「良い」2、「やや良い」1、「どちともいえない」0、「やや悪い」-1、「悪い」-2を付与して、総合計をアンケート参加者数で除して、一会員の平均を算出したもの。
個人消費を反映する百貨店売上、チェーンストア売上高の足許の推移を見ても、タオルの属するカテゴリーの売上は、長きに亘り前年を下回っているトレンドが持続しており、大きな流れではこの傾向が持続しているといえる。
また足許については、6月中旬に近畿地方を襲った大阪北部地震、2週間後の西日本大豪雨、9月には近畿へ直撃台風がくるなど数々の自然災害が発生したこともあり、小売店への入り込み客数数が減少したことなどを背景に、タオル以外の全カテゴリーにおいても、一部商品を除いては厳しい消費販売動向が続いている。
▼全国百貨店、チェーンストアにおけるタオル分野の売上高伸び率推移
|
前年同期比伸び率%、店舗数調整後 |
4月 |
5月 |
6月 |
7月 |
8月 |
9月 |
10月 |
全国百貨店売上高合計 |
0.7 |
-2.0 |
3.1 |
-6.1 |
-0.2 |
-3.0 |
1.6 |
「その他家庭用品」分野 |
-4.6 |
-4.5 |
-3.3 |
-10.8 |
-6.8 |
-9.6 |
-5.0 |
全国チェーンストア売上高合計 |
-1.2 |
-2.3 |
0.1 |
1.5 |
0.1 |
1.9 |
-0.7 |
「住関品 日用雑貨品」分野 |
-3.4 |
-8.9 |
-2.6 |
-1.9 |
-1.1 |
0.5 |
-3.4 |
「住関品 家具インテリア」分野 |
2.7 |
1.8 |
0.1 |
2.4 |
0.4 |
2.2 |
2.0 |
(注)百貨店売上高は日本百貨店協会発表、チェーンストア売上高は日本チェーンストア協会発表資料による
こうした中、ここしばらくタオルの仕入価格は上昇傾向にあるが、今回調査では4割程度の先で、販売価格に転嫁している動きも見られており、こうした点において、悪い状態が続く中にも、業況判断を改善させる先も見られているところである。結果、今回11月調査では、業況判断DIは -0.54 と前回8月(-0.60)、前々回5月(-0.78)に比較すると改善しつつある流れとなっている。
一方で、3か月先の業況に関する判断DIについても、先行きの判断は-0.54と、足許から横ばいの予想をしている先が多い。数値的には、前回8月調査での-0.60に比べると、若干改善した判断となっている。
これは、前回8月調査では「良い」「やや良い」と回答する先が無かったが、今回調査では15%の先から前向きな回答を頂いたことが主な理由だが、「やや悪い」「悪い」と答える先が54%(前回調査では53%)と引き続き過半数を占めているなど、先行きに関しても厳しい状態が続いていくと考える先も多く、全体としては改善したものの大幅なマイナス圏での動きが持続する結果となっている。
Q.販売、仕入動向に関する質問
会員企業では、足許の販売状況は、「良い」「やや良い」と回答する先が皆無であった前回に比べ、今回調査では8%の先が「良い」、15%の先が「やや良い」と回答するなど、販売動向に対する判断は改善しているといえる。また、「悪い」「やや悪い」と判断する先も73%であった前回8月調査に比べて今回調査では46%と、段階を追って改善の兆しが見えてきている。
しかし、「良い」「やや良い」と回答している先においても、その理由を「ネット販売が好調」「インバウンド需要から、お土産需要など特定の取引先が大変好調」「新規開拓の奏功」としているものの、「震災、台風、大雨などの消費に対するマイナス影響がある」こともあり、「全体としてみれば、需要は引き続き芳しくない状態が続いている」との慎重な姿勢を崩していない傾向。
また「悪い」「やや悪い」とした先では、「衣料専門店等郊外型の店舗は客の入り込みに天候不順が悪影響を及ぼした」「季節感がなくなりつつあり秋冬ものの販売が不調」などマイナス要因を指摘する先も多く、全体的としては、依然として厳しい状況が持続していると判断される。
また、前月との比較で仕入価格の変化を問う質問では、前回8月調査では、一部の先で「下降した」と答える先があったが、今回は「下降した」との判断をする先はなくなっている。
今回調査では「上昇した」と判断する先が69%と、前回調査(33%)に比べてその比率が大幅に上昇しており、全体としては引き続き上昇基調にあるといえる。
こうした判断の根拠としては、大阪泉州など国内メーカーが、原油高等を背景とする資材、燃料費高騰や、人手不足に因る運賃や各種製造加工賃の値上げなどを理由に、製品価格の値上げを強く求めていることに加え、原料綿花価格が高止まりする中、円ドルレートが日米の金利差の拡大から円安傾向で推移するなど、輸入コストも上昇する方向であることが背景にあると思われる。さらに、米中の貿易摩擦の激化が国際経済や各種国際価格に上昇圧力を与えるのではないかと先行きを懸念する声も聞かれるところ。
一方で、前月との比較で販売価格の変化を問う質問では、38%の先では、製品仕入価格の上昇を製品販売価格に転嫁していることを背景に「上昇した」と答えている一方、15%の先で「下降した」と答えているなど、会員企業間で強弱入り乱れる判断となっている。今後、国内製品を中心に仕入価格が更に上昇していくことが予想され、顧客への価格転嫁できるかどうかの帰趨が全体の傾向に大きな影響を与えてくると思われる。
Q.在庫動向に関する質問
在庫水準に関しては、今回調査においても「不足」と答えた企業はなく、「適正」と答えた企業が全体の 38% 、「過剰」と答えた先が 62%を占めるなど、荷動きに停滞感を持つ企業が依然として多い傾向が持続している。 前回調査に比べると、「過剰」と答えた先の割合は少し増加(前回調査では53%)していることもあり、業界全体としては、流通段階でのだぶつき感は依然として強く、荷あまり状態は持続していると思われる。
以上
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