調査報告について / REPORT

2020 年8月実施「タオル流通動向調査」の結果に関するリリース

 アンケート対象のタオル流通会員企業の今調査での景気動向への見方を示す「業況判断DI」は -1.31 と、非常事態宣言発表を受けた外出自粛、小売店舗閉鎖などの影響から消費経済が大幅に悪化していた前回5月調査時点の -1.67に比べ改善を見たものの、依然として非常に厳しい水準にとどまっている。
 また、先行きに関しても、三ヶ月先の「業況判断DI」は -1.30と、5月調査の -1.27 に比べて改善をみておらず、当面厳しい状態が持続すると考えている先が大勢となっている。
 販売動向に関しては、「やや悪い」「悪い」と答える先が全体の92%にのぼるなど、「販売状態は悪化している」との判断が殆どを占めている。
 また、前月に比べて仕入価格、販売価格の上下を問う質問では、このところ、顧客店舗の時短営業、外出自粛が続く中、顧客との商談の機会も激減している状況を反映して、殆どの先では、いずれも「変化なし」と回答している。
 この間、在庫水準に関しては、百貨店売上が4月をボトムに徐々に戻してきていることや、チェーンストア売上の堅調な動きに支えられて、前回5月調査時点より在庫回転が徐々に上がってきていると思われるが、在庫水準の評価は依然「過剰」との声が多く、流通在庫過多の状況には変化がないものと思われる。


Q. 業況判断に関する質問
 今回調査の業況判断は -1.31 と、調査開始以来の既往ボトムである5月調査(-1.67)に比べて改善がみられたものの、依然非常に厳しい水準にとどまっている。コロナ禍が顕在化した2月調査で大きく悪化(-1.29)したが、全国的に緊急事態宣言が宣言されていた5月調査では、そのレベルに比べて更に悪化していた。今回は、前回5月調査に比べると、やや改善したとは言えるものの、水準的には2月調査の水準前後までの回復にとどまっている。
 長いトレンドで見ると、2018年2月に従来の既往ボトム(-0.85)をつけて以降は、1年9ヶ月に亘り厳しい水準ではあるものの、概ね -0.6 ~ -0.7のレンジで推移していた。しかし、消費税率引き上げ後初となった昨年11月調査時に悪化、その後コロナウイルス禍の拡がりを背景に2月調査で更に大きく悪化して、現在の水準にまで落ち込んでいる流れとなっている。

*業況判断DIは、「良い」2、「やや良い」1、「どちともいえない」0、「やや悪い」-1、「悪い」-2を付与して、総合計をアンケート参加者数で除して、一会員の平均を算出したもの。

 今回判断水準が引き続き非常に厳しい理由は、直接的には、1月後半以降中国で発生した新型コロナウイルス禍の世界的な拡がりが持続していることや、小売店等での売上高などの個人消費の落ち込みが短期間に改善されないことが原因となっていることは間違いない。さらに去年まで景気を牽引してきていたインバウンド需要が、コロナ禍の蔓延による国境封鎖の影響からほぼゼロの水準まで落ち切っており、これが宝飾品などの百貨店での高額品の販売に急ブレーキをかけている。
 一方で、個人消費の動向をみると、百貨店などの店舗が閉鎖された、あるいは大幅時短営業をしていた4~5月に比べると、各分野で回復している傾向がみられ、これに伴い各社の判断も全体として上向いている。今回調査では8%の先が、「良い」と判断しており、また「悪い」と判断する先は、前回5月調査の73%に比べると今回調査は54%となるなど低水準ながら改善がみられているところである。コロナ禍発生の前後で売れ筋商品も大きく変化してきており、マスクなどのウイルス対策医療品の需要急拡大、またいわゆる「巣ごもり需要」による近隣スーパーやホームセンターの販売好調などもみられ、タオルに関しても、衛生意識の向上から日用雑貨分野では販売が好調な様子も垣間見られているのが足許の現状である。

 この間、個人消費を反映する百貨店売上、チェーンストア売上高の足許の推移をみると、全国百貨店売上は、4月の臨時閉店の影響等から前年比70%ダウンを超える低水準となるなど消費は大きくブレーキがかかることとなったが、5月以降月を追うごとに改善してきている。もっとも、インバウンド需要がなくなったことなど本質的な問題点は解決されておらず、7月時点においても未だ前年を20%程度下回る状況が続いている。方や対照的に、食料品が主体のチェーンストア売上高は全体としては比較的堅調な推移となっており、こうした中で、タオルを含むカテゴリーである日用雑貨、家具インテリア関連なども好調な地合いを持続している。

全国百貨店、チェーンストアにおけるタオル分野の売上高伸び率推移

前年同期比伸び率%、店舗数調整後 2月 3月 4月 5月 6月 7月
全国百貨店売上高合計 -12.2 -33.4 -72.8 -65.6 -19.1 -20.3
「その他家庭用品」分野 -12.1 -30.7 -68.0 -59.8 -13.3 -15.0
全国チェーンストア売上高合計 -1.6 0.8 -4.5 1.1 3.4 2.6
「住関品 日用雑貨品」分野 8.2 2.8 -0.2 1.0 3.2 2.8
「住関品 家具インテリア」分野 -10.1 -4.0 -24.9 -4.9 22.3 14.4

(注)百貨店売上高は日本百貨店協会発表、チェーンストア売上高は日本チェーンストア協会発表資料による

 一方で、3か月先の業況に関する判断DIについては、今般の不透明感の主因であるコロナウイルス禍の消費への影響も「新規感染者数も減ってきてさすがに徐々に解決するだろう」と見方をする先もあるものの、「足許春夏商戦は全く盛り上がりを欠き、秋冬についても見通しがつかない」と悲観的な見方の先も多いうえ、「長引く混乱で今後信用不安が増すのではないか」と取引先の倒産などを心配する向きもでてきており、先行きの判断は-1.23 と足許の判断とほぼ同水準の判断になっているなど、景気の先行きに対する判断も引き続き極めて厳しい水準にとどまっている。

業況判断DI


Q.販売、仕入動向に関する質問
 販売動向に関する状況をみると、今回8月調査では、「悪い」と判断する先が54%、加えて「やや悪い」と判断する先38%を入れると、全体の92%の先が悪い方向に判断している。これは前回5月調査(93%)と比べてほぼ同じ低水準となっており、販売状況は徐々に改善しているとはいえ以前厳しい状況であるということが判断される。
 2月後半以降、中国ほかからのコロナウイルス罹患者の入国を妨げる措置が取られ、国境を事実上閉鎖していることから外国人の入国が極端に減少、インバウンド需要は皆絶に近い状態になっている。また、全国的に非常事態宣言は解除されたものの、引き続き移動の自粛が叫ばれる中、入り込み客数の減少もさることながら、営業時間の短縮は引き続き継続しており、百貨店などの小売売上金額の前年対比減少幅縮小のピッチも遅れ気味になっている展開。「巣ごもり需要」は高まり、ECによる消費も大きく進展したものの、消費全体から見ればその比率はまだまだ低く、販売状況全体の向上に寄与するレベルにはなっていないと思われる。
 こうした状況下、マスク、除菌液などの衛生商品は爆発的な売行きを示すなど、ドラッグストアやホームセンターなどでは活況を呈する売り場も散見されるが、食料品を除く多くのアイテムは販売金額が減少基調である状況は継続している。そうした中にあって、「自宅待機」者の増加、「手洗い」の奨励などを背景に実用向けのタオルの販売は相対的に堅調となっており、「多くのアイテムの中ではタオルは比較的恵まれたアイテムである」との意見もきかれるところでもある。

 前月との比較で仕入価格の変化を問う質問では、今回調査では「上昇した」と判断する先はなくなっており、92%の先では「変化なし」と回答している。また、販売価格の変化を問う質問では、92%の先で「変化なし」と回答しているなど、仕入、販売においては、今回調査では、殆ど価格の動きはなかったと判断できる。
 コロナウイルス禍のために、テレワークの推進が勧奨され、商談自体があまり活発に行われていない状況で、単価的な変化も発生することはなかったことが推察される。

Q.在庫動向に関する質問
 在庫水準に関しては、2~3月はコロナウイルス禍の影響から中国などからの入荷が遅れている状況であったが、3月中にはこうした状況も解消して、入荷は順調になってきていた。一方で、3月末の非常事態宣言発表以来、街への外出が極端に抑えられ、店舗での販売が急速に不振になると、卸レベルでの滞貨が顕著になってきた。同宣言発表後は、店舗自体も閉鎖され、顧客とも連絡が取りにくい状態が進み、卸からの商品の送り込みは非常にしにくい状態となっていた。
 前回5月調査時においては、この状況を反映し、在庫に関しては、73 %の先が「過剰」との判断をしており、前々回2月調査時点の36%に比べて大幅に悪化していた。
 その後、非常事態宣言も解除され、百貨店売上の落ち込み幅も減少基調、スーパーなど量販店での売上は堅調な状況であるという状況を反映して、在庫も段々と水準が下がってきている途上であると推察できる。
 こうした動きを反映して、今回調査では、在庫を「過剰」と判断する先が54%と、前回調査時に比べてかなり改善してきている状況であるが、大きな流れでは、「不足」と判断する企業がない状態が続いており、流通在庫過多の傾向が持続していることに変わりはない状態である。
以上

なお、本調査に関するご質問等がありましたら、お気軽に以下にご連絡ください。
info@osakatowel.jp

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